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素因減額について

大阪地判平成15年2月20日

年相応の骨密度の低下を考慮しなかった例、60代女性

原告には、同年代の女性相応の骨密度の低下傾向は認められたものの、それを超えて骨粗鬆症と評価されるほど骨密度の低下した状況にはなかったことが認められる。したがって、被告会社の骨粗鬆症による寄与度減額の主張は理由がなく、採用し得ない。

大阪地判平成23年3月28日

高齢であることを考慮しなかった例、事故時98歳、デイサービス送迎中の事故、肋骨多発骨折等、外傷性気胸等 外傷は4カ月で治療 廃用症候群、嚥下障害を経て11か月後に肺炎により死亡したケース

故人の本件事故後の入院治療は,長期間にわたっており,本件事故と直接は関係ないような病名も見受けられるが,本件事故による受傷内容と故人の年齢を勘案し,前記のとおり本件事故と相当因果関係のある損害を算定する。

骨粗しょう症のケース

骨粗しょう症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患です(WHOによる定義)。

 

鈴木祐治裁判官(2009赤本下巻51〜67頁)によると、高齢の被害者については概ね減額せず、若年者の場合には、疾患に該当するとし、減額割合も比較的高い傾向にあるといえるでしょう。

 

最高裁平成28年3月4日(判タ1424号115頁)

83歳で、骨粗しょう症の高齢者がデイサービスの送迎車から職員に手を引かれ、踏台を使わずに降車して着地する際右大腿骨頸部骨折の傷害を負った事故です。
本件事故は、本件車両の運行が本来的に有する危険が顕在化したものではないとして、運行起因性は否定されました(自賠法3条)。

 

「なお、本件においては・・・Aの年齢及び身体の状況に 鑑みて本件車両から降車する際に使用されることを常としていた踏み台が使用されていないといった事情が認められ るが、Aの降車の際には本件センターの職員の介助のみでなく、踏み台を使用することが安全な着地のために必要で あり、上記職員がその点を予見すべき状況にあったといえ る場合には、本件センターに対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求等の可否が問題となる余地が生ずる が、このことは、本件における運行起因性の有無とは別途検討されるべき事柄である。」

誤嚥性肺炎のケース

東京地裁平成25年6月14日判決(交民46巻3号740頁)

1 既存障害が損害に与えた寄与度について
 (1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア パーキンソン病とは,中脳黒質のドバミン作動性神経細胞が変形脱落する選択的黒質変形疾患であり,無動,筋強剛,振戦,姿勢反射障害が4大兆候とされる。通常用いられる重症度分類によれば,重症度を「症状は一側性で,機能的障害がないか,あっても軽度」(ステージ1),「両側性の障害があるが,姿勢保持の障害はない。日常生活,職業には多少の障害があるが行い得る」(ステージ2),「姿勢保持障害が見られる。活動はある程度制限されるが,職業によっては仕事が可能である。機能的障害は軽ないし中程度だが,1人での生活が可能である」(ステージ3),「重篤な機能障害を呈し,自力のみによる生活は困難となるが,まだ支えられずに立つこと,歩くことはどうにか可能である」(ステージ4),「立つことも不可能で,介助なしではベッドまたは車椅子に付きっきりの生活を強いられる」(ステージ5)の5段階に分類されている。通常,数年の経過で緩徐に進行する。その他の症状として,嚥下障害,流涎が挙げられる。
イ Aは,平成18年6月29日,神田クリニックで,多発性脳梗塞及びステージ2ないし3のパーキンソン病と診断され,平成20年10月6日まで継続的に診察を受けていた。
  Aは,平成20年10月,介護保険要介護認定・要支援認定等の申請をし,神田クリニック医師は,同月11日付けで,Aについて,診断名を「パーキンソン病候群,多発脳梗塞」,発症年月日を「いずれも平成18年6月」,「平成18年冬から動きが鈍い,振戦あり」,「ADL(日常生活)は自立レベルに近いが,起居動作不安定であり転倒のリスクが増している」,「どうにか自立のレベル」などとする主治医意見書を作成し,大里広域市町村圏組合は,平成20年10月14日付けで,「杖等を使わず歩けるものの,足を摺る感じで歩行,特に歩き出す時,足がうまく進まない」,「デイケアや住宅改修を希望している」などとする認定調査票を作成した。
ウ Aは,平成20年12月20日,杖を使わずに1人で散歩をしていたところ,本件事故に遭遇し,これにより左腓骨開放性粉砕骨折,左脛骨近位端開放性粉砕骨折,右大腿挫創,頭部挫創等の傷害を負い,直ちに埼玉医療センターに搬送され,同日,左下肢切断手術がされ,また,右下肢の足部内部に生じた約10cmの挫創を縫合された。同日撮影された頭部CTスキャンによれば,多発性脳梗塞が認められたが,頭蓋内に外傷性所見は見られなかった。
  Aは,同月21日から経口による食事摂取を開始し,平成21年1月5日には炎症反応が落ち着いたため抗生剤の使用も中止された。また,創部に一部壊死が見られたものの,再度の膝切断はせずに洗浄で経過を見ることとなった。
  Aは,水分を取る際にむせ込みがあったことから,とろみ剤を使用するなどしていたが経口摂取は可能であった。Aは,同月13日,埼玉医療センターを退院し,同日,行田病院に転院した。
エ Aは,同日,行田病院で嚥下障害を起こし,同月15日にも誤嚥したため,経口摂取は中止となり,IVH(中心静脈栄養法)に変更された。
  Aは,同月17日,嚥下性肺炎と診断され,同日のカルテには,パーキンソン病の影響も考えられるなどと記載されている。
  その後Aには,経口摂取が試みられたものの改善が見られず,同年4月21日,胃ろう増設手術が実施された。
  Aは,同年5月9日,一般病棟から療養病棟に移動し,同日以降は,経過観察となり,平成22年1月7日まで行田病院に入院した。
オ Aは,同日,行田病院を退院し,同日から平成22年5月23日まで彩の苑に入所し,同施設で療養したが,同日本件自宅に戻り,同年10月27日まで本件自宅で過ごした。なお,同年6月7日から同月9日まで,胃ろう交換のため,行田病院に入院した。
カ Aは,同年10月27日,深谷赤十字病院に入院し,平成23年5月20日吉沢病院に転院し,同年6月3日同病院で死亡した。吉沢病院医師作成に係る死亡診断書の原因欄には,直接原因として「急性肺炎」,急性肺炎の原因として「心不全」,発病から死亡までの期間は「14日間」と記載されている。
キ B株式会社の整形外科専門医C医師)は,平成23年2月1日付け意見書で「Aの既存障害は3級ないし5級程度と考える」旨の意見を示し,同年11月16日付け意見書で「死亡の主原因は既存症ないし私病であり,死亡に対する本件事故の関与の割合は1割と考えるのも一案である」旨の意見を示した。また,同社第1医療部D医学博士は,平成23年4月19日付け意見書で「パーキンソン病が嚥下障害の原因となることはよく知られている。本件事故前のAのADLはどうにか自立レベルにあったから,本件事故がなければ全介助になる程のADLの低下はなかったと考えられる一方,本件事故による傷害は,嚥下障害とは無関係な両側下肢の傷害であるから,既存障害がなければ義足が装着されてリハビリが行われたと考えられ,既存障害の関与なく臨床経過を説明することは困難である。本件事故と既存傷害は同程度(50%)に寄与したと見ることができる」旨の意見を示した。

(2) そこで検討する

上記事実関係によれば,Aは,本件事故により,左腓骨開放性粉砕骨折等の傷害を負い,左下肢切断手術を施行されたが,本件事故から約1か月後に入院先の病院で嚥下障害を生じ,その後嚥下性肺炎を引き起こし,胃ろう増設手術が施行され,本件自宅へ一時帰宅するなどしたが,本件事故の約2年6か月後に,再入院先の病院で急性肺炎(発病から14日)で死亡したというのである。
ア 本件事故と,Aの嚥下障害,嚥下性肺炎及び急性肺炎による死亡(以下,これらを併せて「本件死亡等」という。)との間に相当因果関係があることは当事者間に争いがない。
イ 次に,既存障害と本件死亡等の間に相当因果関係があるかを検討する。
 Aは,平成18年6月29日及び平成20年10月11日にパーキンソン病及び多発性脳梗塞と診断されたこと,パーキンソン病の症状の1つとして嚥下障害が挙げられること,行田病院医師が作成したカルテ(平成21年1月17日欄)にも,嚥下性肺炎についてパーキンソン病の影響も考えられる旨記載されていること,C医師及びD博士の各意見書でもパーキンソン病と本件死亡等との間の相当因果関係を否定していないことからすれば,Aの既存障害であるパーキンソン病と本件死亡等との間には相当因果関係があることが認められる(なお,多発性脳梗塞については,本件事故当日に撮影された頭部CTスキャンによっても頭蓋内に外傷性所見は見られず,D博士も,多発性脳梗塞については症状が顕在化しておらず,嚥下機能の脆弱性の原因となった可能性がある旨を指摘するに留まることからすれば,多発性脳梗塞と本件死亡等の間の相当因果関係を認めることはできないというべきである。)。
ウ 次に,Aの既存障害であるパーキンソン病が本件死亡等に与えた寄与度を検討する(なお,パーキンソン病と平成21年5月8日までに発生した損害との間の相当因果関係については当事者間に争いがない。)。
 Aは,平成18年6月28日,ステージ2ないしステージ3のパーキンソン病と診断され,平成20年10月11日,医師から「ADL(日常生活)は自立レベルに近いが,起居動作不安定であり転倒のリスクが増している」,「どうにか自立のレベル」と診断されたところ,この間に急速な増悪があった事実は見受けられず,上記のとおり,パーキンソン病が通常数年の経過で緩徐に進行することからすれば,本件事故時の症状もステージ2ないしステージ3程度であったと推認できること,Aは本件事故当日も杖を持たずに1人で散歩をしていたことからすれば,本件事故当時におけるAのパーキンソン病による既存障害の程度を9級10号程度と認めるのが相当である。そして,このようなAの障害の程度,本件事故前に口径摂取の制限がされていた事実や嚥下障害及び嚥下性肺炎の兆候が見られないこと等に鑑みれば,既存障害であるパーキンソン病が本件死亡等に与えた寄与度を3割とするのが相当である。
 したがって,被告らは,Aに発生した損害のうち,本件事故から平成21年5月8日までに対応する部分について全額,同月9日から死亡日までに対応する部分について,その7割について責任を負う。

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